2022.2.24
皆さんは第一回のノーベル文学賞の受賞者をご存知だろうか?1901年記念すべき第一回文学賞はフランスの詩人シュリ プリュドムだ。恐らくかなりなフランス語通文学通でなければ知らないと思う。筆者も名前ぐらいしか思いつかない詩人だ。しかし其の時に落選した人は子供でも知っている。かの偉大なレフ・トルストイだ。そう「アンナ・カレーニナ」 「戦争と平和」など誰もが知るあのトルストイだ。世界中に信奉者を生み後世の作家たちが模範としたかのトルストイだ。きっとかなりの読書人がその作品の登場人物の多さに辟易しながらも紙に人物の名前を整理して読み進めた経験があるかもしれない。筆者も高校時代から英語日本語で読んだ。トルストイ落選の経緯には政治的なものがあったらしい。もうひとりは化学の周期表でお馴染みのメンデレーエフだ。彼は第6回ノーベル化学賞で受賞を逃している。実際に受賞したのはフッ素(おなじみ歯をきれいににするあのフッ素Fフライパンの加工に使われるフッ素Fだ)を世界で始めて分離したアンリ モアッサンだ。其の業績は決して小さくはないがメンデレーエフの周期表がなければその後の化学の発展はかなり遅れたかもしれないことを考慮すれば必ずしも最良の選択かという疑問は残るだろう。。外れたといえば語弊があるだろうが日本人のノーベル文学賞第一号は「伊豆の踊り子」で有名な川端康成だ。筆者は米国の大学にいた折日本語日本史を含む東洋学関係の教師や研究者に「最も偉大な日本人作家は誰だと思うか」という大胆な質問をしたことがある。真に若気の至りかもしれない大胆な質問だが5人のうち4人は私と同意見だった。日本語の授業でも彼の作品が取り上げられていた。即ち谷崎潤一郎だ。日本的なようでギリシャ的土着的なようで世界市民的な作風を誇る。文体は洗練され最初から最後まで飽きさせないstory tellerだ。生涯にわたりまず失敗作駄作がない。もう一人ノーベル賞が何故与えられなかったのかと思うのは英国作家のEM FOSTERだ。「Two Cheers For Democracy」 「インドへの道」などでお馴染みの20世紀最良の人道主義作家だ。長い目で見ればノーベル賞も多少の当たり外れはあるのかもしれないと思うのは私だけだろうか。
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