東大叡智会

名著紹介(1)江戸後期の詩人たち

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2022.6.18

冨士川達郎先生の名著である。この本が出てすぐに購入して読んだ記憶と感動が今なお新しい。歌人俳人詩人のうち前二者は言葉として今もその内容にあまり変化がない。則ち江戸期においても歌人は短歌をつくる人であり俳人は俳句をつくる人であった。しかし江戸後期に於いて詩人は漢詩人であり明治以降では新体詩(今では使わない言葉だがほぼ現代詩のこと)をつくる人が詩人と呼ばれる。明治に入り漢詩はなにか古臭い思想を盛る古い道具の様に考えられ大いに衰えた。反面明治時代には新しい詩がおきた。『新体詩抄』は、明治維新を経て欧化主義が全盛時に時代において、西洋の詩を参考にして日本語による詩を作る詩歌の革新という明確な意識の下に、「詩集」という西洋式の形態を日本に初島崎藤村めて実験的に創作したものだ。少なくとも当時は皆そう思った筈だ。島崎藤村はその「藤村詩抄」序文の中で「遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫び、あるものは西の詩人のごとくに呼ばゝり、いづれも明光と新聲と空想とに醉へるがごとくなりき。うらわかき想像は長き眠りより覺めて、民俗の言葉を飾れり。傳説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帶びぬ。」これは藤村の詩に対する改革宣言新時代を作る宣言なのだ。彼の考えの中には漢詩が新しい思考や新時代を謳うには古いもの不自由なものと映っていたに違いない。私も富士川先生のこの本を読むまでは少なくともそう信じていた。漢詩の中に色々な新時代を予想する新しい考えが芽生えていたとは思っていなかったのだ。この思い込みは富士川先生の名著で見事に打ち破られた。この本のお陰で私は今でも漢詩漢文が大好きだ。仕事での中国旅行で絵付きの漢詩の本を求めた事で現地のエージェントの方から中国文学の先生を紹介され学生時代に暗唱した漢詩漢文を紙に書いたら話が弾みお別れに中日友好(こちらは日中友好)の詩を頂いたのがとても懐かしい。

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