2022.6.30
受験の専門家(予備校講師 予備校で教えている大学講師 進学校の教師等)ではなく本物の超一流の世界的国文学者による受験参考書である。いや正確に言えば単なる受験を超えた古典文学入門書だ。著者小西甚一先生は日本中世文学 比較文学の大家だ。学士院賞受賞。日本中世文学の世界的権威であり其の堪能な語学力を生かして海外で教え講演をした人だ。筆者が大昔浪人生でYゼミにいた時だろうか?先生の講演をお聞きした記憶がある。当時浪人生であったにも関わらず片っ端から有名な学者作家等の一般向け講演会(当時は文化講演会と称されていた。)をはしごしていた田舎出身の少年は強く学問に憧れを抱いていたのだ。小西教授の「古文研究法」は単なる受験参考書ではない。巻頭に先生は言われる。「これからの日本を背負ってゆく若人たちが、貴重な青春を割いて読む本は、たいへん重要なのである。学者が学習書を著すことは、学位論文を書くのと同等の重みで考えられなくてはいけない。りっぱな学者がどしどし良い学習書を著してくれることは、これからの日本のため、非常に望ましい。」この本はいまや文庫化され受験生以外の一般人にも読まれている。私も引っ越しでなくした分を含めて数回は買ったが今本棚にあるのは改訂された文庫版だ。先生の生きた口調が伝わるそして本気で古典の今に生きる意味価値を訴えてくる。内容が高度かもしれないが一読の価値がある本である。
© 2021 東大叡智会.