2024.2.3
この論争は半ばユーモア、しかも英米の歴史を含む上質なユーモアだ。事の発端はある米国の化学者が「紅茶に塩を入れるとおいしくなる」と話した事による。この話に自他ともに認める紅茶大国(1日1億杯を消費するとも言われる)英国が反発し、ユーモアを含んだ楽しい論争となっている。
騒動の発端は、1月下旬に出版された米ブリンマー大のミシェル・フランクル教授の著書。紅茶に一つまみの塩を加えれば「苦み」を減らせると教授は主張した。これが英国で話題になり、英紙デーリー・メールのコメント欄には「気持ち悪い」「米国人のアドバイスはいらない」といった投稿が殺到したらしい。紅茶といえば英国、英国人には米国はコーヒーだろうという思いがある。
だが、同大使館では「電子レンジで紅茶を温めている」とも説明。これに英内閣府が「やかんを使わないと紅茶ではない」と反論コメントを出すなど、ユーモアを交えた楽しい応酬が続いているという話である。
紅茶を巡る米英の因縁といえば名高いボストン茶会事件」だ。1773年には、当時英国の植民地だった米国の東部ボストンで、市民が英国船に積まれた紅茶を海に投げ捨てる「ボストン茶会事件」が発生。その当時の米国人の飲み物は意外にもまず紅茶であった。その紅茶を英国は高値で米国に売りつけていたのだ。この紅茶事件がその後の米独立戦争につながった歴史がある。 フランクル氏は英メディアに「偏見を持たずに塩を入れてみて」と主張。この飲み方は8世紀の中国の文献にも記載があり、特に新しい考えではないという。
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