2024.8.19
2018年は私大医学部が不正入試で大激震の年であった。相当数の私大医学部で、女子の合格に差別をかけたり、一点いくらで不正な合格が表面化したりした年であった。この項はまた別のページで述べたい。まずは東京女子医科大の話である。女子医大は長い歴史を持つ有名な私立医学部である。長い間東京の救急医療の一中心として信頼が置かれ、一目置かれる存在であった。東京女子医大は現在、経営危機に陥っている。臓器移植や心臓外科などで豊富な実績を持ち定評があった同大だが、その経営が悪化し始めたきっかけは2度にわたる医療事故だった。01年と14 年に患者が死亡する医療事故を起こし、厚労省から特定機能病院の認定を取り消され、私学助成金も減額。患者が大幅に減少し経営が悪化していたなかで、19年度に理事長に就任したのが創業者一族である岩本絹子氏だった。経営再建と称して賞与の大幅削減などに取り組む一方、設備の建て替え・新設に資金を投入。20年には経営悪化を理由に職員の一時賞与をゼロにすると発表したことを受け、約400人の看護師が一斉に退職する意向を表明。同年には理事室を新校舎の彌生記念教育棟に移転させる費用として6億2000万円を計上している疑いが発覚し、職員からの反発に拍車をかけた。 結局、同学は賞与を支払うことに決め、看護師の一斉退職が免れたものの、21年には約100人の医師が退職するという事態が発生(同学附属の3病院合計)。背景には大幅な給与カットがあった。経営悪化を受け、21年度入学から学費を年間200万円、6年間で計1200万円値上げしたことは大きなニュースとなった。
さらに東京女子医大のブランドを傷つける事態が発生。一部の卒業生らが23年3月、岩本理事長を背任容疑で刑事告発し、これを受け警視庁は、岩本理事長が昨年4月まで代表理事会長を務めていた同学の同窓会組織である一般社団法人・至誠会に特別背任の容疑があるとして、同学本部などへの家宅捜索を実施した。これは逆に女子医大に自浄作用が働き始めた証であろう。この後更に以下のような動きがあった。
不明朗資金疑惑で警視庁の強制捜査を受けた東京女子医大で、理事会が創立者一族である岩本絹子理事長の解任を決めた。第三者委員会が岩本理事長の責任を厳しく指摘し大学再生へ解体的な出直しを求めた。理事長解任は当然である。
発端は3月の警視庁による強制捜査だ。同窓会組織「至誠会」元職員が、勤務実体がないのに多額の給与を同会から得た―との一般社団法人法の特別背任容疑で、理事長室や岩本氏宅などが家宅捜索を受けた。
第三者委は、元職員らが大学から業務委託された会社の雇用となった後、同社と至誠会から給与が二重払いされていたと容疑事実を認定した。大学の利益に反し、岩本氏に近い者のみの利益が図られた過大な報酬だったと、その背任性も認めた。
同大は岩本氏が理事長就任後、激しいリストラを進め、良質な医療が提供できなくなったと懸念される。第三者委はその問題にも踏み込み、小児集中室の運用停止や小児集中治療医の大量退職を「岩本氏の重大な経営判断の誤り」と批判した。
「目先の儲(もう)けが最優先事項」で、医療安全確立による評価向上や中長期的な業績向上は後回しにし、「理事長としての適格性に疑問がある。法人への忠実性が欠如」とまで酷評した。第三者委としても異例の厳しさだ。それほど異様だった。
個人創立の学校にはこんな話は多い。大昔、文科省の補助金で大学中に創立者の銅像、胸像を作りまくった学校経営者がいた。日大騒動も同じであり、沖縄の高校でも同じ騒動があった。私立学校でも学校は公共のものであるという、考えが根付くのはそしてそういう学校経営者が出るのは数世代を要するという事だろうか?筆者自身はこの様な学校に子供を預けようとは思わないが、何が何でも子供を医学部に入れて病院を継がせたい医師が多いのは間違いないだろう。そしてこの状況を利用してこの理事長が私腹を肥やしたというのも間違いない。まさに公共の名に値しない人物であった。
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