2024.10.11
昨日2024年10月10日2000時にスウェーデン学術アカデミーは今年度のノーベル文学賞を韓国人女性作家であるハンガン氏、漢字名は韓江である。韓国語の音で言えばハンガンは「漢江の奇跡」のハンガンと同じである。発表直後にYou Tubeで発表を聞いたが最初にスウェーデン語で発表があり、その時点で韓国ハンガンという名前は聞き取れた。筆者は勿論スウェーデン語を解しないが、英語と音が近いので、韓国という言葉とハンガンという名前は聞き取れた。その後に英語の発表があり、確認したという次第だ。昨日は少し遅くまで韓国マスコミの反応を見たが、格別なものはなかった。今日の午前中は韓国放送局のYou Tubeが多くあり、来日時のインタビユーや彼女自身の英語インタビューも聞くことが出来た。同じアジア人として非常に誇らしく嬉しい限りだ。近年の文学賞は欧州の男性作家に偏らないように配慮がなされているように思われる。アフリカや南米の作家、生まれた国の言語と作品を書いている言語が一致しない事もある。一言で言えば男女のバランスも考えた多様性だろう。その他に筆者が考える受賞者像がある様に思う。
①大きな括りで言えば、人道主義的傾向がある作家が選ばれている。
②人道主義的であると同時に悲しく苦しい現実を恐れず、また誇張せず淡々と書いた作家が選ばれる傾向がある。
③同時に悲しく苦しい現実を希望を持って書いた作家が選ばれている。
④ある種の文学的実験をしている作家が受賞しやすい。
⑤詩を書き、小説も書く人が多い。日本の作家には少ない。
⑥ある意味時代を作る人に与えられやすい。現実を鋭く切り取った位では受賞できない事が多い様に思う。三島由紀夫は受賞を熱望し、受賞目指して色々な運動もしたが結局受賞出来なかった。反面日本では三島ほど読まれたとは言い難い大江健三郎はすんなりと受賞した。筆者は三島文学も好きであるが、それ以上に大江文学を敬愛する。読みやすさを言えば前者であるが、何かポリシー、言うに言えない背骨を感じるのは間違いなく後者だ。しばしば大江作品の読みづらに閉口するが。読みづらさを超える物があるのも確かだろう。
ハンガン氏は代表作「少年が来る」に於いて、韓国民主化運動の大きな事件である、光州事件を扱ったが、過度に政治的でもなく、偏った政治的傾向でもない。あくまでも人を見る目は透徹した希望を抱かせる優しさである。まさにノーベル文学賞に値する作品と言えよう。その詩は小説と違い斬新であり、実験的だ。ある意味素晴らしいコントラストである。
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