2025.1.25
近年親子留学という名前の子どもを海外のインターナショナルスクールで学ばせる御家庭が急増してきた。この方法は日本で急増する前に、隣国韓国で大流行となり、「キロギアッパ러기 아빠」(雁の父の意味)という言葉を生んだ。雁のように父親は餌をせっせと運び、母親は子育てに専念する意味であろう。日本の場合、本当の母子家庭の方もいらっしゃるだろうから、この言葉が当てはまらない場合もあるかとは思うが。
子供を連れて海外に移住する方はよくブログ等で発信されているので、皆さんも目にされることがあると思う。この事は子供の教育上どの様な形が一般的なのか、どういうメリット、デメリットがあるのかを英語を教える側から見た筆者の考えを述べてみたい。同時に同じ年代の子供を持つ親として、また、海外での生活が長かった者としての考えも述べてみたい。
①海外で子供を育てることのメリット 学校が英語系のインター校であれば、まず単純に英語が出来るようになる点だろう。特に英国、米国、カナダ、オーストラリア、NZ 等々であれば、現地の公立校でも当然英語は出来るようになる。非英語圏、例えば、マレーシア、フィリピン、タイ等でもインター校なら本人の頑張り次第で高度な英語を習得することは難しくない。国内のインター校は学費が高すぎて通わせられない方々も海外なら可能だろう。インター英語と帰国子女英語力に差があることも銘記すべきだ。
② 大事なのは英語と同時にしっかり、母国語である日本語の力をつけることだ。身近な子にインター生がいるが、同学年の国語教科書レベルがしっかり理解できる子はクラスの10%程度である。日本語授業があってもこの程度なので、もし海外で日本語補習クラスが無い地域なら大変である。同時に英語、日本語の同時習得を目指す帰国子女、インター生の場合、保護者にそういう経験がなければ安易に、ご自分だけで、判断しないことが肝要である。自分が英語が出来ないコンプレックスを子どもの英語に託すのは必ずしも賢い選択ではない。
③ 興味深い事に、二か国語教育は、人により、人間の言語野を刺激して、よりお互いの言語の理解を深め合う働きをする点だ。2か国語を同時学習したために、どちらの言語もより理解が深まるのは興味深い減少である。但しこのケースは10-20%の生徒に起こる奇跡の様なものである。
④ 数年ごとに言語の異なる居住地を転々とする子達は将来、自分の場所、今風に言えば、アイデンテイテイを失う危険がある。自分は何人なのか、何が自分という人間の基礎なのか、これは大事な問題である。
⑤インター生、海外教育移住の方達の中には、子供を伸び伸びと育てたい、型にはまった人間にしたくないという方が多い。しかし、この型こそ人としてのアイデンティティーである。基礎なければ人は浮草のようなものであろう。基礎の上に有るのは真のアイデンティティー=個性である。インター生にはきちんと座って本が読めない子が多い。教室でソファーや床の好きな所で本を読んできたからだ。机でもどこでもきちんとした姿勢が出来ることは人として当然のことだ。出来ないことは決して優れた個性でもないし、伸び伸び育ったということではないだろう。
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