東大叡智会

歴史の段階ーヒトラー台頭期と今日の日本

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2025.8.3

歴史は通常,私達が想像する様には単純に推移しない。そこには歴史の必然があり、たまたまの主に個人に依る偶然もある。多数が世界を作るが、一人の勇気ある(しばしば過激な)行動が社会を動かし。歴史を動かすこともある。

2,26事件でもし鈴木貫太郎首相が命を落としていたら(実際彼は呼吸が止まっている。)誰が昭和天皇と示し合わせて日本を戦争の終了に導くことが出来たであろうか?他の誰かが代わって出来たかもしれないが、客観的に見れば、それだけの大仕事は2,26で死地をくぐり抜けた鈴木貫太郎だけにしか出来なかったかもしれないのだ。彼が生き延びたのはかなりの偶然である。

第一次世界大戦前に画学生であったヒトラーは気ままに、かつふしだらに暮らしていたが、戦争が始まるや突然愛国者になって有能な兵士となった。その後には色々な経緯があったが,政治家としては不遇な少数派の時代が以外にも長かった。よく知られているように、第一次大戦の賠償金の支払いに苦しむドイツでは多くの右派政党が台頭した。なぜなら多くの左派政党が存在したからだ。左右両派の対立の中で、ヒトラーのグループは埋没していた。この埋没から脱出する方法として、彼が考え出したのは 1)敵を作り出して、人々の関心を経済問題から即ち日々の生活の苦境を忘れさせることであり、また(2)徹底したメデイア対策即ち、大衆に深く考えさせるのではなく、イメージを作り出させる事であった。ナチ党にとって、知性は敵であった。前者はユダヤ人を敵に見立てる戦略である。(実際にはユダヤ人のドイツ内での経済力はそれほど大きくなかったが) この戦略がヒトラー率いるナチ党とその他の右派政党の分岐点であった。良識あるドイツ人も多かったが、多数派にはならなかったのだ。

翻ってこの傾向はヨーロッパや米国において著しい。欧州では既に極右政党が一部政権入りしている。其の主張は外国人移民排斥だ。しかし随分前に少子化傾向が顕著になった欧州では移民は避けて通れない問題である。外国人の働き手なしでは経済社会が持ちこたえられず社会は崩壊する。比較して日本では高齢者が働く傾向が強い。欧州に比べたらま働き手不足は深刻度が違うのだ。しかしこの傾向は日々進んでいく。多くの仕事の分野で働く外国人、また移民してくる人たち、其の多くは中国人である。折り合いをつけながら暮らしていくしかないのだ。人は考える力を放棄し疲れた時、そこにポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する。私達の日本はこれに耐えられるだろうか?

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