2025.12.9
良書である。正直大学受験の参考書、問題集と違い、中学受験、高校受験の受験本には長く売れる定番の良書が極めて少ない。専門家が書いているのか、受験経験者の素人集団編集部員が片手間に書いているのか、極端に言えば、著者不明のものさえある。その中でこの本はある種の中学受験社会科に対する見識を示している。以下いくつか良い点を書いてみたい。あくまでも筆者の感想である。
①地理、歴史、公民のバランスが良い。従来の知識型社会科参考書は地理、歴史に偏り、公民の説明がf十分だが、この本はそこに十分なスペースを割いている。
②最初に大きな文字で全体の流れと要旨が書いてあり、大枠で捉えやすい。
③ 適時イラストが効果的である。千歯扱きや備中鍬の表記があっても、それがいかなる物かを瞬時に理解させる絵は欠かせない。
③内容的に不十分とこの本に対する書評があるが、見開き右側の基礎問題もまとめの一部門として読むのが良い。問題数的には確かに不足気味、正確に言えば精選されている。これは中学入試をよく知るこの本の著者が中学受験生(特に難関中学受験生)が社会科に使える時間がそれほど多くはないことを知って、時間配分的に書いた分量であろう。分厚いのを際限なく書くのは簡単であるが、それでは期間が限られる難関中学受験生にはこなせない分量となる。目的が難関中学入試合格なら、算数、国語、理科に割く時間は貴重なものだ。
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