2023.6.26
国公立医学部入試は相当に大変だ。医学部受験生は全国トップクラスの灘、筑駒、開成、麻布、桜蔭生等といえども、怠けていたら合格は覚束ない。まして全国のトップクラスでない偏差値70以下の高校の生徒ならば尚更だ。そこで出身県外の医学部に進むことになる。東京は北は旭川医科大学から南は琉球大医学部まで、優秀な生徒を抱え全国へと生徒を輸出している。多くの小学生が中学受験をするのが当たり前の都内の学力は平均的に高い。そして都内には国公立は東大、東京医科歯科、首都圏で言っても、千葉大、横浜市立大、群馬等と人口に比べて、国公立大医学部が不足している。九州は逆に九州大学(福岡)国立並みに学費が易い産業医科、佐賀大、大分大、長崎大、熊本大、宮崎大、鹿児島大等と全ての県にある。人口に比べて首都圏は国公立医学部が少なく、九州は多い。都内は私立の医学部は多くあるが、ごく一般の平均所得位の御家庭では私大医学部の学費を6年間払うのは容易でない。故に私大医学部生は開業医の子弟が多くなる。私がここに書いていることは医学部受験生の親御さんたちには当たり前過ぎて、「何だこの記事は」と言われるかもしれない。しかし、従来比較的入り易いと言われていた私大医学部底辺校も偏差値が大幅に上昇しているのだ。筆者が主に開業医の子弟で私大医学部底辺校を目指す受験生を対象とする医学予備校に勤めていた頃は、偏差値40くらいの学校が少なくとも数校は存在していた。具体的な名称は避けるがその様な医学部を受験する5年以上10年くらい浪人している生徒も結構いたものだ。誤解を避けるために言うが、偏差値が低い医学部を出た医師が必ずしもだめな医師かというとそれは全く無い。立派にご父兄の跡を継いで、地域医療に貢献している方は沢山おられるのだ。しかし国公立は学力的に難しい、私大は学費的に難しいとなれば、第三の道を探さねばならない。そこで最近注目されているのが、海外(東ヨーロッパ)の医学部を出て、日本の医師国家試験を受けるという道だ。営利的に何社かがこの道を斡旋している。以前は,おそらく1980年代?位まではフィリピン等の海外で得た医師資格で日本の医師国家試験を受験できたようだが、現在は厚労省が認可していない模様だ。これに対して最近の東ヨーロッパ(EU圏内)の医師資格はどうやら厚労省が認可している。少人数だが合格者が出ている。授業は全て英語で世界各国から医師資格を取るために、ハンガリー等に留学しているのだ。国内ではこのまま認可し続けるのか議論も有るのだろうが、少なくともここしばらくは大丈夫だろう。米国も同じ制度をとって国外の医学部で資格を取る米国人がいる。韓国はフィリピンの資格を認可しているのか、フィリピンの医学部在籍の沢山の医学生に会った事がある。面白い例だが、以前フィリピンで、南ア出身の医学生に会って詳しく話し込んだ事があった、この場合は学費の問題だった。その時点では南アよりフィリピンが学費が安かったのだろう。彼は学期ごとに、休学を入れて学費を稼ぎながら、フィリピンで医学を学んでいた。英語がnative spekerの子だった。興味深いことに医師資格を取ったら最終的には英国で働くということだった。医師資格は国際的なものなので此位、流動的で良いのかもと思う。EU圏で資格を取った日本人が海外で医師として立派に働けば、立派な国際貢献だ。
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