東大叡智会

永遠の良書 ファーブル 昆虫記

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2025.4.29

ファーブルの昆虫記は今も世界中で子どもから大人まで読まれている。これは決して子供の為だけの本でもなく、また単に理科だけの昆虫入門の本でもない。そのいずれかであったなら、これだけの年月(初版1878年-1907年まで)をかけて出版され、かつ世界中で読まれ続けるはずがない。適格な表現をすれば昆虫に寄せた、昆虫を通しての自らの世界観を語る詩集、昆虫詩人とも言うべき作品である。当然の如く研究論文のような体裁はとらず、読み物的な語り口と、擬人化した表現が多い。この本は科学書ではなく、むしろ一般的な読み物として評価が高くなり、ロマンーロランやメーテルリンクなどの文学者でさえ愛読者であったという。彼は最晩年にようやく高い評価を得、その偉業をたたえる記念式典が1910年(第1巻発刊日を記念日に行われたが、それらはこの著書「昆虫記」のためである。その内容には科学的に重要なものも数多いが、興味深いのは。彼の著作がノーベル医学・生理学賞ではなく。ノーベル文学賞の対象になったというエピソードである。表現を変えれば虫の宇宙であるとも言うことが出来るであろう。

転じて日本では1922年(対象年)かの大杉栄!!が日本初の翻訳を出版している。およそ100年前である。大杉はフランス語を学校で学んだので最初の翻訳者として歴史に名前を刻むこととなったのだ。その後林達夫訳(岩波書店版)奥本大三郎訳(集英社版)と出版されているが、筆者の手元にあるのは集英社版である。共通しているのが翻訳者が単なる翻訳家というより、思想家哲学的側面を持つ人々であるという点であろう。専門家にとっても魅力的な本である。現在筆者の所有しているのは、集英社版であり、普通の大きさの本である。イラストと文字共に大きく見易いのがありがたい。時々折に触れて読み返すのは実に楽しい。

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