2025.7.7
筆者の沖縄生活はかれこれ10年となるが、移住者にとって、いや恐らく、全ての沖縄県民にとって最大の問題は交通渋滞である。基地問題を最大の問題と考える方はおそらく県外の方であろう。私が住む街にも基地があり、隣町にも大きな基地があるが、今のところ特に実害を感じることは正直ない。これは私が鈍感な為かもしれないし、安易に全ての人が基地問題に悩まされていないという程の大胆な結論をここで述べるつもりはない。しかしながら、交通渋滞に悩まされていない県民は殆どいないであろうことは間違いない。主に次のような問題が有ると思う。
【1】単純に通勤通学送迎の問題である。 沖縄本島中部地方から那覇市までは場所によるが10ー20kmの距離にある。最大でも25kmは超えない。全国的には20ー45分程度での車の移動であろう。首都圏、関西圏の人口が大きい地方なら致し方ないが沖縄の人口はたかだか150万程度である。この内本島はせいぜい100万人程度であろう。しかし那覇市の混雑時の1時間あたりの平均速度は全国で一番遅い10.5km/時間であり、東京大阪を上回る渋滞ぶりであり、金曜日の雨の日など那覇まで2時間位かかることもある位だ。距離は20 kmほどである。沖縄県民は割合辛抱強い。だが有効な対策を打たない当局に不満がない訳ではない。
【2】時間の目処がつかなければ経済活動、企業活動は成り立たない。きちんと決まった時間で必要なものを運搬できない地方に企業が移転してくれるだろうか?大いに疑問だ。
沖縄に鉄道を作る話は浮かび上がっては消え、消えては浮かび上がってくる。ないかと言えばあるし、あるかと言えばないのだ。幽霊みたいなものである。時々新聞やその他のメデイアに予想される路線が示され、この路線ならどのくらい赤字で毎年此の位借金が出来て県民の負担が増えますという話が展開される。まるで5年くらい前の記事を再掲載しているのではないかと思うレベルである。結論はいつも同じであり、「赤字が幾らです。だから造りませんし、準備が遅れているのは赤字になるからであり、県当局が怠けてはいないんですよ」という言い訳に聞こえてしまう。
実はモノレールを作るときの試算もそうであった。大幅な赤字になる、県民も観光客もモノレールなんて使わないから大赤字になるだろうと思われていた。2両編成でも赤字になるから、できるだけ便数も少なく小さく作る事に夢中であった。ところがである。開けてみれば今やモノレールは那覇市と周辺の住民にとって、欠かせない足となり、増え続ける観光客も利用者が激増、当初の見込みと全く違うことに成り、少し前に急ぎ3両編成になった。それでも混雑している位である。
そこで素朴な疑問である。本当に時々マスコミに登場する「鉄道作ったらこんなに赤字になりますよ。県民の借金になりますよ」論は本当なのであろうか?モノレールの時のように大外れという事は、本当にないのであろうか?赤字が想像外の大幅でないならば県民はおそらく納得するのではないだろうか?筆者の素朴な疑問は県民も同じことを思ってはいやしないだろうか?県当局は通勤通学送迎で。渋滞を避ける事が出来ない県民の痛みを本当に理解しているのだろうか?素朴な疑問である。
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