2022.2.26
森銑三(1895-1985)は偉大な在野の歴史研究者だ。愛知県に生れ小学校時代から極めて成績が良かったが家庭の経済的事情で旧制中学(現在の高校)への進学を断念した。小学校の恩師は其の才能を惜しみ色々と奔走したようだが結局進学は叶わなかった。代わりに高等小学校(現在の中学校の様なもの主に経済的事情で中学へ進めない生徒が通う)に入学した。旧制中学はエリートが進むコースであり其の進学率は現在の大学進学率よりも低かった。その後地元の図書館に採用されそこから彼の在野研究が始まる。図書館で働きながら主に近世特に江戸時代の研究に没頭する。その後勤めをやめてからの時代が彼の面目躍如だ。図書館に通いながら主に民間伝承や埋もれたまま知られていない書籍を使い丁寧詳細かつ膨大な研究を成し遂げた。皆さんお馴染みの江戸時代の色々なエピソードクイズ番組に出てくるような、この様な情報は大抵森の研究に負っている。歴史小説家の資料は多く森の著作から取られている。公私に関わらず一貫して清廉な人で華美を嫌った真の学者であった。しかも其の業績は高等教育でなく独学でほぼ為された。以て瞑すべしとはこの様なことを言うのだろう。
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